神への挑戦
「そうは言ってもな…ハヤトがあのビルに居ると仮定しても、携帯が繋がらないのはおかしくないか?携帯ぐらいは繋がるだろう」

「どうやら電源を切っているらしいぞ。ジャックさんって人が最後にハヤトと電話をしていたんだが、途中で電話を切られて以来、音信不通なんだとよ」

「音信不通か。一体あのビルの中で何が起きているんだか…」

ボクシングの試合よりも神経をすり減らす様な出来事にヒサジは、大きくため息を吐いていた。マリコにどう説明すれば良いんだか…。

ヒサジの悩みは尽きない。

「俺は取り合えず手が空いたから、このビルの外で敵情視察の任を渡されたのよ。それなりに危険手当は弾んでもらうから別に良いけど…って感じだな」

ドラゴンは厳つい顔つきに似合わずさわやかな笑顔をヒサジに見せた。見慣れれば何て事無い表情なのだが、周りに居た人達は、そんなドラゴンに奇異な視線を送る…。

ヒサジはそんなドラゴンを見て、この事件に無関係はずなのに、ドラゴン以上に真面目に考えている事自体がバカらしくなった。

「ハヤトの事は心配だろうが、ヒサジはハヤトの帰りをゆっくり待ってろよ。俺はもちろん銀次さんも居るんだ…自分で言うのもあれだが、それなりに頼りになると思うぜ?」

ドラゴンの語り口調や雰囲気が、少し銀次に似てきた。ヒサジはそんな事を思ってしまった…。

確かに銀次はもちろんこのドラゴンも、いざという時は頼りになる男だ。結果的にLAN闘祭を鎮めたのも良く考えるとその二人だからだ…。

雰囲気で800人の不良の行動を束縛したあの気迫は、ジンやゲンとはまた違う力を感じる。

「確かに頼りになるかもな…ほんの少しな」

ヒサジは親指と人差し指の間をほんの少しだけ開け、そう答えた。そんなヒサジを見てドラゴンは、怒る事なく盛大に笑いだす。
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