神への挑戦
「随分とこじゃれた事言う様になったじゃねぇかヒサジ。やっぱりお前はジャッジタウンを離れて正解だったようだな」

ドラゴンはそう言うと、今さらながら加えていたタバコに火を着け、タバコを吸いだした。ヒサジはそんなドラゴンに視線を送る。

「俺やハヤトは人間として何かしらの欠陥がある男だ。見た目も行動も普通じゃねぇ…でも普通じゃない俺達もこの世界で生きて行く権利はある。だから俺達は、この世界で生きる為に、自分たちの身内で起こした事件ぐらい、自分たちでケツを拭かないといけないのさ」

「それは、俺がもうハヤト達の仲間ではないと言う事か?」

「それは違う。要は立場の問題さ…お前はもう人に夢を与える事が出来る数少ない人間の一人だ。ハヤトの為に何かしてあげたいと考える事は良い事だが、自分を犠牲にしてしまう行為を、ハヤトは決して喜ばないだろう。アイツは人3倍ぐらいプライドが高いからな。外の世界でしっかりやっているヒサジを見て、アイツも自分の仕事をしっかりとこなそうと必死なのさ…」

ドラゴンは、近くで見ていたからこそハヤトの気持ちが良く解った。ケンカの実力以外はからっきしの不良でありながらも、自分の出来る事を模索していたハヤト。

学力も学歴もないハヤトは、初めから人生の選択肢が極端に狭い。そんな中でヒサジはボクシングで結果を残し、マリコは校内でも秀才で将来を嘱望されている女の子。

自分だけがうだつの上がらない状態をハヤトは悔やんでいた。だから自分の仕事は責任を持ってこなそうとしていた。

見本はいくらでもあったから。ミツハルにしろ銀次にしろ、持ち前のカリスマ性で高い評価をしてもらっている男達が目の前に沢山いる。

そんな中で自分も結果を残したいと必死に日々を生きているのだ。

「ミツハルさんも銀次さんも、ハヤトの事は高く評価しているんだがな。でもハヤト自身が納得出来ないと、他人にいくら評価されても意味がないんだろう…あいつも不器用な男だからな」
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