神への挑戦
(どうする…敵に背中を向ける訳にもいかないし。迎え撃つしかないのか)

入口までの距離を考えると、逃げる事は不可能に近い。ハヤトが何かしらのアクションを取り、相手の行動を一時的にでも止めないと逃げれないのだ…。

ハヤトには初めから選択肢は一つしか残されていなかったのだ。

「ちっ!」

ハヤトは相手の視界にわざと入る様に通路のど真ん中に躍り出た。相手は黒いスーツに身を包んだ男で、先ほどジンが殺した男達と同じ服装をしていた。

ハヤトが出てくる前から拳銃を構えていた男は、ハヤトの姿を確認するとハヤトに向かって拳銃を発砲した。弾はハヤトの体をそれ、勢い良く地面に食い込む。

どうやら敵は、いきなり飛び出してきたハヤトに驚いて発砲した様で、照準がしっかりと定まっていなかった様だ。戸惑っている敵を見て、ハヤトは一瞬の判断で意を決した。

自分が死ぬかもしれない危機的状況。それに加えハヤトの持ち前の動体視力と、集中力を最大限に発揮し、ハヤトは的に向け拳銃を発砲した。

手首にかかる衝撃を左手でカバーし、完全に威力を殺した事で、弾は意図した方向にしっかりと進む。ハヤトの誰よりも勝る武器は、ゲンやヒサジすら凌駕する、持って生まれた素質の動体視力だ。

照準は少しも狂う事なく、敵の拳銃の銃口の上面目掛けて発射され、敵の持っていた拳銃を後方にはじき飛ばした。それを確認した後ハヤトは、敵に向け一足飛びで距離を詰めた。

素手ゴロの戦いは、ハヤトの得意とする戦いだ。敵はかなり驚いている様子で向かってくるハヤトと対峙し、ハヤトめがけ蹴りを打ち込む。

だがハヤトにしてみれば先ほどの攻防と違い、これは見知った戦いだ。冷静に敵の蹴りを交わし、逆に敵の足を掴み上方に勢いよく持ち上げる。バランスを崩された男をよそにハヤトは軸足を払いのけ、敵を完全に空中に浮かし、地面に勢い良く叩きつけた。

呻いている男に容赦のない突きを打ち込み、トドメを指す。トドメと言っても意識をなくさせるだけなのだが…。
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