神への挑戦
ジャックは、突然のハヤトの訪問に何やら居心地の悪い思いをしていた。いきなりこの場に現れたハヤトという青年は、エース達の存在に気付いておきながらも、何も言わず、傍目から見れば、高圧的な態度をしている様に見えるからだ。

そんな中、エースはハヤトに視線を向けると、表情を柔らかいものにし、優しくハヤトに話しかけていた。

「こんにちわ。はじめましてかな…エースっていうんだ。よろしくね」

エースの挨拶にハヤトは、頭を軽く下げ、『どうも…』とだけ言い、簡単な挨拶を返していた。ジャックは視線をハヤトに向けはしたが、何も言わず素知らぬ態度をとっていた。

どうやら、ジャックの中で、ハヤトは苦手なタイプだと判断したようだった。

「あいさつは済んだか?じゃあそろそろ本題に入ろうか…エース。まずはそっちの情報を教えてくれ」

銀次は、おのおのが自分の席に着いたのを確認すると、話を切り出し、エースに説明を促した。エースはその銀次の言葉にうなずくと、軽く前傾姿勢になり半紙を始めた。

「俺は今回、とある人から依頼を受けて、仕事をしている最中なんだが、その仕事の内容が、未成年の麻薬密売の真相についてなんだ。そこで俺とジャックは、独自のルートで情報をかき集めていたんだが…まずはジャック、お前から説明してくれ」

ジャックはエースにそう聞かれると、何も言わずに手元のカバンから、クリアファイルを取り出し、書類を何枚か取り出した。

「…俺が独自に調べた情報によると、未成年の密売が盛んになったのは、今から3か月ほど前からだ。それも、北は北海道の苫小牧、南は福岡県の福岡市ってなぐあいに、かなり活動範囲が広い。そしてどの拠点も、大きい港がある場所に集中しているって事だ」

「港町を中心に拡大してるってことか。警察はその事にもう気付いているだろうね。けど、未だに撲滅には至ってないと…」

ミツハルが、ジャックの説明を聞いて、何やら独り言にしては大きい声を出し、考えだしている。

ジャックは、そのミツハルの独り言を、質問と捉え、小さく頷き、補足の説明を始める。

「そうだ。それどころか、いま現在も規模は拡大している…地元漁師の話しだと、警察も随分前から港の輸出入に気を配り、網を張っているようだが、何も進展がないらしい」
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