神への挑戦
「アホに二回もチャンス与えるほど俺は寛大じゃねぇんだ。それにお前の場合はミスじゃなく、単なる裏切りだ…お前もこの世界長いんだから、責任の取り方ぐらい知ってるよな?」

「それだけは勘弁して下さいっ!頼みますから!」

これから自分の身に起きるであろう痛みを考えた矢木は、必死に笹井に懇願する。数時間前にランの腕を切り落とそうとした男とは思えない変貌ぶりである。

「そんなに慌てんじゃねぇよみっともねぇ。別に指を詰める訳じゃねぇんだ…お前にはこれからも働いてもらわないといけねぇしよ」

「へっ!?」

矢木の予想に反して、笹井は温情を感じさせる言葉を矢木に投げかける。笹井の言葉を聞いた矢木は、少し安堵した表情を見せた…。

「ただまぁお前の返事しだいなんだけどな…『上』と『下』どっちが良い?」

安心したのも束の間、笹井の言葉を聞いた矢木は絶句の表情を浮かべる。矢木は笹井の言いたい事を瞬時に理解したのだ…。

そして矢木は、すぐに笹井の質問に答える事が出来なかった。

「…上で良いのか?」

「いえっ!下でお願いします!」

矢木はかなり慌てた様子で下と答える。矢木の返答を聞いた笹井は、手に持っていた小刀を鞘に納めると、満足げに笑顔を浮かべた。

「そうか。俺も可愛い子供を手にかけないで済んで嬉しいぜ。それじゃあ行ってこい」

笹井の言葉を合図に、矢木を抑えつけていた男達が、笹井を外に連れ出そうとした。矢木は観念したのか、抵抗の色を見せずに、男達に連れて行かれる…。

「あの…下って何ですか?」

二人のやり取りを見ていた矢木の部下が、遠慮気味に笹井に質問をぶつけた。笹井は声をかけてきた男に鋭い眼光を向ける…。

「あぁ?」

「なっ何でもないです!すいませんでしたっ!」

矢木の部下は、笹井のプレッシャーに耐えきれず、急いで頭を下げた。
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