神への挑戦

そんな様子を見た笹井は、豪快な笑い声を上げると、先ほどよりも表情を和らげた。

「確かにお前等の親分がどうなったかぐらいは気になるわな。仕方ねぇから教えてやるよ…」

笹井はそう言うと、床で正座をしている男達に近づき、全員を見下ろせる場所に移動した。

「簡単に言えば『上』が死刑で、『下』が無期懲役だ。その選択で、矢木は下を選んだ…つまりは無期懲役を選んだって訳だな」

笹井は詳しい説明を省き、そう答えた。当然ながら男達は笹井が何を言っているのか理解が出来ていない。

「…まだ解らねぇか？もっと簡単に言えば、矢木は本部行きになったって事だ。晴れて睡蓮会本部の構成員の一人になったって事よ」

「…すいません。本部行きがなぜ無期懲役なのかがまだ…」

先ほど笹井に質問を投げかけた男が、そう言葉を漏らす。勇気を出して笹井に質問した事で、他の面々よりかは緊張が解けたのかもしれない。

「それは睡蓮会の本部が閉鎖した場所にあるのが理由だからだ。一回中の詳細を知ってしまったら、幹部の関係者以外は死ぬまで出さないのが睡蓮会のやり方なんだよ。つまりは無期懲役…一生あそこで働いてもらう事になるのさ」

この話を聞く限り、人事を自分で決めれる立場にある笹井は、睡蓮会の幹部の一人なのだろう。実は、この場に居た男達は、笹井の存在を始めて知ったのだった。

矢木だけが笹井の存在を知っており、他の組員は矢木の指示に従い行動していたに過ぎないのだ。知っているのは睡蓮会の存在と場所と、目に見えない暴力を持った存在だと言う事だ。

逆らわなければ良い思いが出来る組織。それが睡蓮会であり、深入りしすぎない様に仕事をするのが、この組織に属する組員の暗黙の了解だった。

「まぁ外に出れないって言っても、悪い事だけじゃねぇんだけどな。外の世界じゃ経験出来ない『娯楽』もちゃんとあるしよ」

笹井はそう言うと、質問をぶつけてきた男の所に行き、その男をその場に立たせた。