神への挑戦
恐らく今回の作戦の中で一番重要になる場所。そしてミストがこの睡蓮会本部に侵攻する事になった最大の要因だ。

「そうだ。場所は把握しているから、その点では問題ないんだが、そこに辿りつくまでの過程が大問題だ…睡蓮会本部で一番あそこの警備が厳重だからな」

「アンダーズチルドレンだったか？地下に住まう子供達の総称…光を受けることなく育つ子供達の仮初の楽園。ジンの最終目的は、その子供達を光の元に解放する事…そうだったな？」

「…あぁ。不遇にさらされている子供達の解放だ。その為にあいつは今日まで生きてきたんだ…どんな犠牲を払おうとな」

あの時ジンがハヤトに話した真実。それがハヤトがこの場所に赴いた理由の一つ。

『堕天使ジン』が誕生した本当の理由がそこにあった。







時間は遡る…。

ハヤトがジンとリュウに遭遇し、ゲンが死んだと聞かされた時まで。

「俺等に何があったかか…正確に言えば俺になんだがな。話しだせば長くなるんだがな…まぁ話してあげるよ」

ジンはそう言うと乱雑にあかれているイスに腰掛けた。それを見たハヤトも近くにあった椅子を自分の近くに持ってきて座り込む。

「ハヤトには昔話した事があったけど、俺とゲンは未出生児なんだ。未出生児って言うのは」

「知っている。戸籍のない子供の事だろ？」

エースから説明を受けていたハヤトは、ジンが話す前に答えた。

「そう…何らかの理由で戸籍をつけられる事なく生まれた子供の隠語だよ。まぁ未出生児って言っても色々あって、そんな子供達の中でも、勝者と敗者が存在するんだ…」

「勝者と敗者？」

「そう。簡単に言えば、ヒサジが勝者で俺が敗者ってところかな…幸運にも警察に保護されたり、赤ちゃんポストに預けられたりするのが勝者。敗者は大人の都合で生かされている子供…それが俺やゲンだ」

淡々と話すジン。大人の都合で生かされる子供…ハヤトはジンの話にただならぬ気配を感じた。
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