神への挑戦
ジンが取り上げたようにヒサジは孤児だ。それも親の存在も確かでない孤児…。

警察に引き取られ、施設に預けられた子供。ジンはそんな子供を勝者と言ったのだ。世間一般的に考えれば、言葉は悪いが孤児は敗者だ。

親の愛情を一切受ける事なく育つ境遇は、子供にとって大きなマイナスになりかねない出来事だから…。

「ねぇハヤト…世界的にある程度の平和な状態が続いているこの世界で、昔と今ではどんな違いがあると思う?」

ジンは突拍子もなく話題を変えてきた。ハヤトはそんなジンを不審に思いながらも、先ほどの話とかかわり合いがあると感じ、真剣に考えだした。

「違いか…いろいろ変わっただろ。食べ物や教育制度、それに科学に医療…言い出せばキリがないぐらい変わったんじゃないか?」

「その通り。全てが良い方に変わったんだよ。平均寿命は延び、犯罪は減り、裕福な家庭が数多く増えた…でも世の中ってそんなに都合良く出来ていないんだよ。何かを得れば同じぐらい何かを失う…それが世の中の理。良くなった反面、悪くなったものも多く出てきたのさ」

「悪くなったもの…それがお前の境遇と何か関係があるのか?」

「あるよ。と言うか、ハヤト…君も関係している話と言っても過言ではないかな。言い方を変えれば、ハヤトは加害者って事になりかねないけどね」

ハヤトが加害者になる話。当然のようにハヤトには身に覚えのない事だった。

「…大衆的な話って事か?」

身に覚えがないのだから、当然話はそうなってくる。ハヤト自身と言うよりは、人と言うくくりの出来事に繋がるのだ。

「そうだね。これも言って行けばキリがないんだけど、今の段階で一番問題なのは健康面なんだよ…これに関して言えば、取り返しのつかない事態にまで発展していると考えられる」
< 236 / 335 >

この作品をシェア

pagetop