神への挑戦
ジンが言い出したのは健康面の話だった。だが、この話をする前に一つ引っかかる事がある…。

「ちょっと待て。平均寿命が延びているこの世の中で、何で健康面が昔より悪くなっているんだ?それは逆だろ?」

先ほどの話をぶり返せば、確かにジンは平均寿命は延びていると言っていた。これでは話の筋が合わない。

「それが逆の様に見えて逆じゃないんだ。簡単に言えば、今を生きるために未来を殺しているって事なんだよ…知らず知らずのうちにね」

「未来を殺す???はぁ?」

ハヤトは基本的には無知だ。一般教養はないし、専門分野以外はほとんど知らないので、ジンの話にはかなりついていけてなかった。

頭は悪くないのだが、学業は小学生までしか経験がないので、結果的には無知って事になってしまう。

「生活習慣病ってやつさ。近代の科学の進歩のおかげで現状のあらゆる事柄を解決出来る様になった過程での因果…そのツケが借金の様に身体を侵食しだしているのさ」

「生活習慣病ってあれだろ?ガンとか糖尿病とか…それがどうしたって言うんだ?」

病気の話をしだしたらキリがない。それこそ病気の場合はバクチみたいなところがあるから、それが今の話と何が関係あるのか、ハヤトにはいまいち掴めていなかった。

「言ってて気づかないかハヤト。昔より健康面で充実しているこの世の中で、どうしてガンや糖尿病は増えてきているんだ?」

「それは…だらしない食生活をして、太りすぎたりしているからじゃないのか?」

「糖尿病はそうだろうね。じゃあガンはどうしてだ?」

「…タバコとかか?」

「タバコを吸わない人もガンになるぞ。それに世の中には小児ガンってのもある。生まれたての子供はタバコを吸わないよな?白血病だって血液のガンだ。タバコだけが原因だと思うか?」
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