神への挑戦
5世代に渡り、日常生活を繰り返すと、体がどう変化をするのか。

それが研究のテーマだった。

実験と言っても特別不思議な事は何もしない。メスとオスの猿を、生まれた時から人間と同じ様に生活させるだけの事。

人間と同じ食事を取り、風呂に入り、フトンで寝る。適度な運動に適度な娯楽…他の猿達に比べれば、贅沢極まりない生活を送るだけだ。

その2匹の猿は、そんな生活を満喫し、子供を産ませると、また子供にも親達と同じ生活をさせるのだ。生まれてきた猿の子供は健康そのもので、何の不自由もなく生活を送っていた…。

ところが、そんな生活にも一つの異変が起きたのだ。2世代目の猿が、子供を産んだ時に…。

「それはね…生まれてきた子供に先天性の異常が発見されたんだ。それこそ普通に良く耳にする事だよ。ぜんそくとか食物アレルギーとかね…生まれてきた猿の子供達の中にそれらの症状を抱えた子猿が生まれてきたんだ。これが何を意味するかハヤトには解る?」

ジンにそう聞かれた時、ハヤトは真剣に思案してみた。

何かしらの原因があって、そういった子猿が生まれたのは間違いない。そしてその要因は、日常の生活での中にあると考えられる。

「ストレス…ってのは安直だな。日常の生活の何かが原因で、そう言った出来事が起きた。そしてそれは人間にも置き換えられるって事か」

「そう…人間に置き換えるのであれば、戦後の高度成長期に生まれた子供が1世代目だ。だからハヤトや俺は、第2、3世代目ってところかな。周りで結構見かけないか?食物アレルギーやぜんそくを持っている人達をさ」

確かに見かけていると思ったハヤト。そば粉がダメだったり、金属アレルギーだったりと、何かしらの拒絶反応を示す人間が結構居ると思ったのだ。

「確かに全てが日常生活が原因とは言えないよ。でも何かしらの要因がこれ等にはある。それに、戦前の人たちに、ぜんそくを抱えていた人はほとんど居ないと言うデータもあるんだ…続きを話そうかな。最初に5世代の研究をしたと言ったでしょう?もちろん実験には続きがあるんだ」


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