神への挑戦
アレルギーやぜんそくを抱えていても、猿は生きる事が出来る。それは人間も同じ様な症状を抱えようとも、さして不自由なく暮らしている事と同じ様に…。

人間には知恵がある。症状を抑える薬を開発した事で、それらの症状を緩和させる事ができるのだ。猿達にも同じ様に薬を処方し、人間と同じ様に健康に気を使いながら猿達に生活をさせた。

そんな猿達も成長を続け、大人になり子供を産める状態にまで成長をした…。

3世代目の猿が子供を出産した時。またしても驚愕の事実が目の前に広がったのだ。

「4代目の猿は、3代目の猿よりもより多くの猿が、先天性の病気を抱えながら生まれてきたのさ。それはもうほとんどと言ってもいいぐらいの比率でね…3代目の時は、病気を抱えた子猿も生まれてきた程度だったんだけど、4代目の場合はほとんどの猿に、それらの症状が確認されたんだ」

「…実験は5代目までやったんだよな?5代目はどうなったんだ?」

伏線は張ってあった。ジンは話の最初に5代目まで実験をしたと言っていた。

それらは間違いなく、5代目の時に何かしらの大きな事件が起きた事を意味している。

「5代目の猿にはね…奇形児が生まれたんだよ。指が多かったり、目が見えなかったりね。つまりはこう言う事さ…清潔や健康を手に入れる為には大きなリスクがあったのさ。便利と言う名の罠。手軽な値段と言う名の悪魔。市民平等と言う名の…偽善」

ジンはそこまで話すと座っていた腰を上げ、窓の景色に視線を送りだす。

「理想と現実は違う。世の中に完璧がないのと同じで、人間にも終わりが近づいているのさ…だが人間はなまじ知能が高い。取り返しのつかない事態に発展する前に、何かしらの対策を練ろうと躍起になる」

ジンはポケットから煙草を取り出すと火を着け出した。ハヤトはジンがタバコを吸うところなど見た事はなかったから、ジンもタバコを吸う事に軽い衝撃を受ける。

そんなイメージなどなかったからだ。

「正確なデータを取るためには、猿ではダメなのさ。人体実験じゃないとね…だが人体実験は99%の安全が保障されていないとする事は出来ない。だから悪を作る必要があったのさ」
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