神への挑戦
ジンは語る。世の中には悪が必要だったと。

「自分たちの都合で悪を作るしかなかった。必要悪…人非道的聖域。それが睡蓮会」

ジンは語る。悪と正義は紙一重だと…。

「守る為の悪が睡蓮会。国家が認めた必要悪こそが睡蓮会なのさ。多くの犠牲で多くの幸福な未来もたらす為に作られた…俺はそんな場所で育った。家畜の様な生活をしながらね」

「…その睡蓮会ってのは実際には何をしていたんだ?お前はそれを知っているのだろう?」

ハヤトはジンにそう問いかけたものの、ジンは何も答えようとはしない。ただ外の景色に視線を送り、憂いの表情を見せるだけ。

もはや麻薬事件がどうこうといった問題ではなくなっていた。ハヤト自身、目の前の情報を理解するのに必死になっている。

ジンの話しが真実なのかはハヤトには解らない。でも、少なくてもジンには色々と謎が多いのも事実だ…。

ミツハルや銀次ですらジンやゲンの身元の情報を何もつかめなかった経緯や、ジャッジタウンを急に去った経緯…。

それにジンは昔、マスターを敵だと断言していた。自分達の存在を脅かす驚異だとも言っていた。

それらの意見を総合する、一つの疑問点が出てくる。そしてそれは、ハヤトにとって恐怖すら覚える疑問。

「…銀次さん達が探しているものって…まさか」

銀次もエースもハヤトに睡蓮会の事は一言も話していなかった。それはハヤトを危険な目に会わせないという優しさからくる事なのだが、ハヤトは少し勘違いをしてしまう。

「お前を…ジンを止める為に動いていたのか。睡蓮会を守る為に…」

睡蓮会は国が認めた組織。それが事実だとした場合、ジャッジタウンのCEOである前田が、睡蓮会の存在を知らない訳がない…。
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