神への挑戦
そんな会話をしているハヤトを見てリュウは、人知れず笑いをこらえていた。

おそらくリュウは、ハヤトには自分が侵入者だという緊張がないのかと言いたいのだろう。それぐらいハヤトにはある種の余裕を感じたのだ。

「貴様……ふんっ。低能な奴とはこれ以上会話が続かんわ。さっさと行け」

男もハヤトの事が気に食わなかったようだ。捨てゼリフを残し、その場を離れて行く。

「随分とご立腹の様だなハヤト。どうした?」

会話が終わったタイミングを見計り、リュウがハヤトに話しかけた。

「いや…絵に書いた様な、嫌な奴だったもんで、少しからかってやろうかと思ってな。まずかったか?」

「全然。むしろ上出来なぐらいだ…これだけ普通に啖呵を切れば、まず犯人に間違われる事はないからな」

不機嫌な様子を見せていたハヤトだったが、思っていたほど不機嫌ではなく、先ほどの対応は意図してした事であったらしい。

「頭でっかちな奴を見るとからかいたくなるんだよ。俺には理解出来ない人種なんでな」

「そうか…まぁ良い。さっさと行こう。いつ身元がバレるとも限らないからな」

ハヤトとリュウは、B地区と呼ばれる場所に向け歩き出す。

ここから先が、アナザーヘブンと呼ばれる研究施設。椎名製薬工業本社でジンが語っていた話が意味する場所だった。






「待たせたね…作戦は無事に成功したよ」

ハヤトの元を離れたジンは、ある場所に来ていた。その場所はハヤト達が向かっていたB地点とは違う場所で、A地点と呼ばれる場所だ。

この場所は主に、睡蓮会の幹部達が集まる場所で、他の地点に比べ警備が厳重な場所である。

「その様だな。ひとまず安心と言ったところか…だがな」

ジンの目の前に居る男はそう話すと、厳しい表情を更に厳しいものにし、ジンに詰め寄る。そしておもむろにジンの胸倉を掴んだ。

「…なぜハヤトをこの場に連れてきた。答えろジンっ」
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