神への挑戦
確固たる証拠も何もない状況で、エースが断言する理由が分からないのだ。

「それは確かにあるかもな…だが、どうしても不可解な点がある。暴力団にしても、麻薬の密売は個人で雇っているプロの運び屋に任せるのが基本なのに、そこいらに居るガキにそんな重要な仕事を任せるとは思えない。それも日本全国同時にだ…どう考えてもおかしい」

「それは…まぁな」

銀二も、エースの説明に納得したのか、考え込むしぐさをする。

「それに、この事件…何か嫌な感じがする。『ノイズ』が走ってるんだ…何か大きな問題と直結している様な気がしてならない」

「出たよそのセリフ…お前の『ノイズ』ってセリフが一番厄介なんだよ。どうしても昔の事を思い出してしまう」

「俺もだよ銀次…」

エースと銀次はこの時、普段見せないぐらい険しい表情をしていた。その表情は、過去に何かがあったことを表している言葉なのだろうが、この場に居る誰もがその事について、何も聞く事が出来なかった。

それぐらい、二人の表情は真剣そのものだったからだ。

少しの沈黙が続き、リビングが静寂に包まれている中、口火を切った男がいた。

「…ところで、俺がここに呼ばれた理由はなんだ?俺は、この話し合いに参加出来る様な情報は何も持っていないが」

壁にもたれかかり、話しを聞いていたハヤトは、真剣な表情で皆に話しかける。

「『外の世界』で何が起きているかは知らないが、俺達はジャッジタウンの中で、生活が終わっているからな。はっきり言って、その麻薬の密売とは何も関係ないぞ…」

ハヤトは、ジャッジタウン以外の場所を、外の世界と言い、麻薬密売とはジャッジタウンは関係ないと言いきった。

「確かに、僕もジャッジタウンの人間は関係ないと思ってるよ」

ミツハルは、そんなハヤトの意見に同意をしめした。

「…じゃあ何で俺が呼ばれたんだ?」
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