神への挑戦

「俺は……マリコちゃんになんて言葉をかければ良いんだ」

突然口を開いたヒサジ。前髪を掻き上げる様に額に手を置き、呟くようにそう言葉を言った。

「言葉が見つかんねぇよ…解らねぇんだよ」

サヨが動揺していたのと同じく、ヒサジもかなり動揺していたようだった。ヒサジは冷静で頼りがいがある男。強くて格好良くて…それでいて人間味がある男だった。

鬼神と呼ばれようがヒサジは普通の人間。サヨが涙を流す前に、ヒサジは静かに涙をこぼした…。






「ちょっと待てエースっ！少しは冷静になれ！」

同時刻。エースの事務所内で、ジャックの怒声が響き渡る。

「そんなもの持ちだしてどうするつもりだ！それじゃ何の解決にもならないだろうが！」

ジャックは必死にエースの身体を押さえていた。エースの手に握られていたのは一丁の拳銃。

その拳銃はＭＫⅡと呼ばれる軍用の拳銃だ。

サイレンサーを装着する事で、完全に音を消す事が出来るタイプの拳銃で、暗殺などの仕事をするにはもってこいのタイプの拳銃である。

「いや…解決にはなる」

エースは手に持っている拳銃を服の懐に着けてあるガンホルダーに差し込む。そして拳銃を隠していたケースの中からサイレンサーを取り出すと、それを違うポケットにしまい込む。

そして着ているコートの袖をまくると、左腕に何やら黒くて長いリストバンドの様なゴム状のものを装着した。そこにエースは、カランビットを2本挟み込み、何時でも取り出せる様な状態を作る。

拳銃の弾は、コートの中に着ている防弾チョッキのポケットの詰め込んでいた。

「ハヤトには本当に悪い事をした。もし俺が帰る事が出来た時は…今は辞めておこう。ジャック…この事務所を任せたぜ」