神への挑戦
「何でかな…何でなんだろうね。何でハヤトはこんな所で寝てるの?」

マリコは考えない様にしていた。でもそれは不可能だった…。

現実は目の前にある。それも見て解るほど単純なほどに。

「ハヤトぉ…こんなのってないよ。一体誰に会いに行ったら、こんな目にあうの?」

ハヤトの受けた傷は全て拳銃によるもの。腹部に二発、左足に一発と解りずらいが左腕に火傷の様な傷が一つ。

腹部の二発は全て急所は外れており致命傷ではなかった。だが左足の傷は大動脈を著しく傷付けており、それが致命傷に至っていた。

医者の話ではハヤトの体は臓器の損傷は少なかったので、ショック状態にある手前。大量出血が原因で、プレショック状態に陥っていた。

血圧低下が原因で、脳が酸欠になっている可能性があった…。

つまりは…。

ハヤトはこのまま目を覚まさない可能性があるのだ。

目を覚まさなかった場合。それは俗に言う…。

脳死…つまりは植物状態という事になる。

「心臓は動いているのに。体は温かいのに。どうして目を覚まさないのよ…何でよっ!何で何で何で何でぇ!!」

突然、錯乱状態に陥ったマリコは、叫ぶ様に言葉を口にする。そんなマリコの様子に気づいた看護師達は、マリコの元に向かうと優しく語りかける。

「落ち着いて?大丈夫…彼は絶対に目を覚ますから」

マリコの背中を優しくさすりながら、そう話しかける。

「おい君……軽々しくそんな言葉を言うな。このまま目を覚まさない可能性だってあるんだ」

看護師の言葉を注意するように、声を抑えながら医者の格好をした男が話す。だが看護師は、そんな医者の事を気にしていないかの様に、マリコに笑顔を向けていた。
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