神への挑戦
解せない事の連続が続く。だが一つだけはっきりしているのは、ジンの作戦はいかなる弊害があったとしても作戦を成功に導くだけの計算がされているというところだ。

昔からそうだった。ジンは表舞台に出てきている様で、実は出てきていない男だ。人をうまく使い、最後の最後に仕上げとしていつも出てくる…。

人の使い方が抜群にうまいのだ。完全に頭脳としての仕事しかしない男。

だがこれからは多分違うだろう。ゲンが死に、ミストの大部分のメンバーは椎名製薬工業の本社で缶詰の状態。それに加え、椎名製薬の工場を襲撃したメンバーも多数いる。

ジンの事だから、足がつきそうなメンバーはこれからの作戦には使わないだろう。

だとするといくらジンが多くの若者を集めていたとしても、動かせる人員には限りがある。

これからは必ずジンが、自ら表舞台に姿を表すことになるだろう。

ゲンの様に、自らが武力を示し、組織を作ったわけではないジンの行動力。それがどのくらいの影響力を示すのか、検討もつかない。

ハヤトは考える。ジンを止めることが自分みたいな凡人に出来るのかと…。

そんなハヤトの様子を見た銀次は、ハヤトの視界に無理やり自分の顔をねじ込むと、笑顔を向けてきた。

「あんまり深く考えるな。お前は取りあえず休んでろって。お前は良く頑張ってくれたよ…ジンの事は俺達に任せとけって。それと睡蓮会の動きもあまり気にするな。そっちの方も手廻しはしてあるからよ」

「手回し?」

「あぁ…エースが俺の代わりに睡蓮会と接触しているはずさ。一応手だし出来ない様に釘を打つためにな」

銀次はエースと細かな連絡を取り合っていたようだ。エースの動きをしっかりと理解している様子。

「それと残念ながら睡蓮会を潰すという目的は、今回は見送りになりそうだ。俺達はこれから睡蓮会と手を組む方に話を進める」

「はぁっ?何の冗談だよ銀次さん」
< 285 / 335 >

この作品をシェア

pagetop