神への挑戦
私情のケンカなら銀次は逃げる事はないだろう。でも銀次は人の上に立つ人間だった。未成年の子供や、ジャッジタウンに属している人間の…。

上に立つ人間には、決断を迫られる機会が多々あるのだ。その全てから逃げずに立ち向かう事など、誰にも出来はしないのだ。

納得のいかない表情をしているハヤトを見た銀次は、少し表情を柔らかいものにすると、少し明るい口調でハヤトに話しかけた。

「ただよぉハヤト…今回の場合、逃げるって言うには少し誤解があるんだよ。俺が下した決断は、どちらかと言えば『後退』だ。三つ巴を避けるためのな…」

「…銀次さん」

ハヤトは感づいていた。睡蓮会と手を組むことの意味することを。そしてそれは、ハヤトの願いと同調している様でしていない展開。

ミストを止めたい。ジンを止めたい…。

願いは同じように見えて、最終目的は全然違った場所に向かうのは簡単に予想ができる。

ハヤトはある意味、一人になった気分になっていた。自分の願いを叶えるためには、ジンの他に大きな弊害が目の前に出てきた感覚。

「仕方ないですね。銀次さんやエースの判断に任せますよ…」

ハヤトは納得した様な口調でそう話した。銀次はハヤトの気持ちを察しているのかどうか分からない微妙な表情をしている。

何はともあれハヤトは、一人になった。味方は大勢いるはずなのだが、一人で決断し、一人で行動をしないといけないことになったのだ。

銀次がハヤトの病室から居なくなり、病院に静けさが戻った頃。

病室からハヤトの姿は消えていた。

内藤が言っていた言葉。「進むかどうかは君が決めな。アイツは多分行動に移している…」という言葉。

ハヤトには、病室で待つという選択肢は残っていなかった。
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