神への挑戦
時間的には早朝に近いので、事情聴取はしていない。なのでおやっさんは昨日の詳しい話しを聞こうと思い、銀次に連絡したのだ。

そして二人が居る場所は、警察署の近くにあるバーだ。都心に近い場所にあるためか、近くには昼近くまでやっているバーなどが多く、密談をするにはちょうど良い場所なのだ。

集まった二人は当然酒は飲まずに、コーヒーを注文し、個室の様に区切られている席に着く。どうやらこのバーのマスターとおやっさんは顔なじみの様で、酒を頼まない二人の都合を理解しているようだった。

「ずいぶんと疲れた顔してるじゃないおやっさん。顔が半分死んでるぜ?」

銀次は少し笑いながらそう言うと、目の前に置かれているコーヒーに手をつけ、一口飲む。

確かに中年には徹夜は辛いようで、暑さと眠気でいつもの覇気はない様に見える。

「お前だって人の事言える顔かよ。眠いって顔に書いてるぞ?」

「その表現古いから。俺は問題ねぇよ…多少の気がかりはあるけどな」

そう言う銀次もやはり疲れた顔をしている。いつもならコーヒーを目にしたら、すぐにでも煙草に手を付けそうなものなのだが、徹夜している分、ニコチンの摂取を必要としていないのだろう。

「お互い疲れているだろうからさっそく本題に入らせてもらうぞ。お前が捕まえたカツミという男…何だか様子がおかしいんだ。先日捕まった未成年達とも似ている様に見えるがそれよりももっと酷い。それも時間が経つほどに人格が変化しているしな」

「人格に変化?」

達観した様子で冷静なガキがミストには多い傾向だった。それはカツミも同じで、ライブハウスで見たカツミもミストに係わっているであろう人間と同じ傾向が見れたのだ。

そのカツミの人格に変化が見えたとは、どういう事なのだろうか。
< 300 / 335 >

この作品をシェア

pagetop