神への挑戦
伝えてはいけないと俺が判断した。この件は俺がゲンから譲り受けた大事な約束である。ゲンという男が最後に託した思いを、俺が遂行するた為に…。

俺は仲間すら出し抜いたのだ。

「睡蓮会本部で見た現実。それは俺にとって信じがたい現実でした」

俺は目の前の老人にすべてを話す決意をした。俺が睡蓮会本部で見た現実を。

そしてゲンの最後の生き様をな。



睡蓮会本部B地区。アナザーヘブンに乗り込んだ俺とリュウは、謎の医師内藤になぜかアナザーヘブンの内部の案内をされていた。

子供たちが白衣を着た男たちに集められている場所の奥には、病院の通路ほどの幅の通路があり、その奥にはセキュリティーがなされているのであろうドアがあった。

今は解放されているのだが、ドアにはカギ穴の様なものとカードが刺さるであろう場所がある。

「普段はこの入口はオートロックなんだ。今は解放されているけどね。いちいちカードさしてカギ穴ひねってたらいつまでたっても子供たちの移動は終わらないしさ」

せわしなく仕事をこなしている白衣の男達の隙を見て俺たちは、セキュリティーがなされていた場所の奥に入って行った。

「それと補足な。ここ居る子供たちは、全て番号と記号で管理されている。この場所に連れてこられた順番に、アルファベットと二桁の数字の構成でネームが決まるんだ。服にネームが付いているだろ?あれがそうだ」

せわしなく通路の奥から現れる子供たちの方に、視線を向けると確かに上着の胸の位置にネームがある。Fー51や、Cー89といった英数字が書き込まれている。

「まぁあれだけだと間違って取れた時に分からなくなりそうだから、もう一か所にもネームは刻まれているんだけどな。どこだと思う?」

内藤はリュウではなく、俺の方に視線を向けながらそう聞いてきた。

「さぁ…」

当然俺に分かるわけもなく、何も答えられなかった。
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