神への挑戦
「俺は建築士じゃないから何とも言えないよ。管轄外だし俺が考えても仕方がないしね」

「まぁそれはそうだけど」

なんだか敬語を使うのも馬鹿らしくなってきた。いつの間にかタメ口を使っちまってるし俺…。というかこの内藤という男は、超がつくほどの合理的主義者のようだな。

自分の管轄以外の事にまるで興味がないみたいに見える。

「今度機会があったら聞いてみるよ。君も心配で眠れなくなったら困るだろうしね」

なんだかさっきから俺と内藤の二人だけが会話をしている様な状態になっていた。俺の隣に居るリュウは、この会話を聞いてはいるのだろうが、注意深く周りの様子を観察しているためか、会話に参加する様な気配はない。

俺はタケシに会うためだけにここに侵入しているので、道順を忘れない程度に施設を見て回っているのだが、リュウは多分何かしらの作戦があるのだろう。

目つきが怖いほど鋭くなっている。

「それじゃ行こうか。もう少し見ていたいかい?」

内藤は今度はリュウに声をかけていた。あまりにも真剣に周りに気を配っているリュウに、違和感を感じたのかもしれない。

「いえ。もう大丈夫です」

そう言うとリュウはそのまま口を閉ざし、先を施すように内藤に視線を送った。そんなリュウの様子を見て何を思ったのか、意味深な笑みを浮かべると、何事もなかったかの様に、また説明を始める。

「そういえばここから先はかなりブラッグな場所なんだけど、君達はそういうのに強い方かな?」

内藤が思い出したかのようにそう言葉を述べる。

「そういうのって…」

「強いですよ。強くないとこの場所では生きていけませんし」

こういう時だけは俺よりも早く反応を示すリュウ。俺を気遣ってか、それともこの先に何かしらの用事があるのかは謎である。

「ふふっ、それもそうだよね。こいつは失敬」

そういうと居住区の奥にある、これまた厳重にセキュリティーがされている入口の方に内藤は歩いて行った。
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