神への挑戦
ブラッグな場所ってか。今更何を見ても驚かない自信はあるんだが、改めてこの内藤という男が言うと、相当なものがこの先にありそうな気がしてきた。

人が目の前で死ぬところも見たし、俺自身さっき殺されかけた。それを考えると怖いものはない様な気もする。

「ハヤト…しっかりと目に焼き付けとけよ。この先にあるのは世の中の闇だ」

「闇?」

内藤とは少し距離をあけて歩いている俺にリュウが話しかけてきた。

「ジンがどんな生活をして、このような行動を起こしたのかが分かる場所だ」

そう言うとリュウは俺の前を歩き、内藤のすぐ後ろまで進んでいく。

「ちっ…」

自分でも分かっている。俺は今、もの凄く緊張しているってことはな。

このエリアに踏み込んでめまいを覚えたのも全ては緊張がもたらす高揚感のせいだ。理解出来ない出来事の連続で感情のコントロールがうまく出来ていない。

ショックな出来事が起きた時に気絶する奴ってのは、今の俺みたいな心情になったものの事を言うのだろう。

現実を逃避する為に脳内が勝手にアドレナリンを放出しているんだ。感覚をマヒさせる代償。だが自分の気の持ちようでどうにで出来るはずだ。

ジンが何を見てきたのか。そしてタケシがどうして睡蓮会に属しているのかもこの先に広がる光景にヒントがあるはずなんだ。

俺がここで弱音を吐くわけにはいかねぇ。

俺がそんな事を考えていると、内藤はセキュリティーを解き、危険エリアへの扉を開いた。そして俺らの方を向き、視線を送ってくる。

「ようこそ。君達はこの世の行く末を見る権利を得た。俺は君たちを歓迎するよ…」

ジンは睡蓮会が必要悪だと断言した。なのに睡蓮会を拒否している。

リュウはそんなジンの行動に賛同し、行動を共にした。そして俺はそんな睡蓮会の事を知るためにこんな場所まで来てしまった。

そして俺は、普通に生きていれば経験しないであろう出来事に直面する。
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