神への挑戦
だがそれは、単なる大義名分に過ぎない。

だってそれが理由ならこの組織の現状はおかしすぎる。

「秩序を保つため…そんなものおかしいだろ。秩序とここに居るガキ共に何の関係がある」

なんだか無性に腹が立つ。理屈がどうとか治安がどうとか、そんな事どうでもいい。

俺はそんなに頭が良いわけじゃない。歴史を学び、未来の行く末を考えたことは一度もない。でも納得がいかないんだ。

「世の中金が全て…睡蓮会はそれを体現しているだけだろうが」

色々な理由を着けて、真実を隠しているだけだ。

ここに居る子供達は、生かされている訳でもなく、未来を担う為に教育されている訳でもなかった。

家畜同然に飼育されているだけじゃないか。

「新しい医療技術の開発に伴う人体実験。本来なら未来あるガキ達の命を不当に扱い、死するべき運命の人間を生きながらえる行為…これのどこが必要悪なんだ」

俺が内藤に案内され、見てきた光景の俺なりの結論がこれだ。

難しい話は正直覚えていない。でも目で見た光景なら理解出来た。

子供たちの生体データを徹底的に管理し、細かく分類し、それを元に実験を行う行為の数々…。

その過程で出来た大量の子供たちの死体。

少しも無駄にしませんと言わんばかりに、死体は全て冷凍管理され、必要に応じて違う実験に応用している。

俺からすれば全てが常軌を逸していると思ったんだが、その中で一番腹がたったのが…。

生体肝移植ってやつだった。

なぜなら子供たちの多くの死因が、これの為に命の灯火を消していたからだ。

「必要悪とは言わない。だがこれもまた権力の象徴なんだ。医学が進み、人は金で命を買える時代になった。その過程で睡蓮会の様に独自のルートで医療を金に変える組織が出てきても何の不思議もないんだよ」
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