神への挑戦
ここでも内藤とハヤトの会話に参加しようとしないリュウ。リュウには少し危惧している事があったからだった。

睡蓮会は法の外の組織だ。

なのでハヤトの話す行為自体に反論をする必要はない。何をしてもそれらを裁く措置を取られることなどないのだから。

それでも内藤がハヤトの話に付き合うのはなぜなのか。

それはおそらく内藤の興味本位だろう。外の意見。それも純粋に善悪を判断する庶民的意見を聞いてみたいと思ったに違いない。

…と仮定すると、内藤はおそらく俺達の素性に薄々気づいている。

そうなるとこの状況は非常にまずい事になる。命を奪われる危険があるからだ。

だが内藤は自分の自室に俺たちを招き、こうして密室の状況を作り出してから、非常に危ない内容の話を俺たちにしている。

少しでもこれからの行動に役立つような情報が欲しい。だからこの場から逃げるという選択肢は俺たちには初めからない。

というよりもここまで奥深くまで侵入しているので、表立った逃亡という選択肢は存在しないのだが。

以外にも熱しやすい性格をしているのだろうハヤトは、内藤との会話を続けていた。

「不思議がなかったら何をやっても許されるのか?」

「本来善悪に許す許さないという選択肢は存在しないと俺は思っているよ。合理的だとか、民意だとかは所詮人間が作り出した偽善に過ぎない。生存の本質は単純な闘争本能だ。社会主義だとか民主主義だとか言っても根本はその言葉で全て説明がつく…違うかい?」

違わない。その通りだ…。

ハヤトもそれを理解しているはずだ。ジャッジタウンで血なまぐさい争いを経験しているハヤトが、この綺麗事を理解していない訳がない。

それでも納得が出来ないのだろう。世の中に反発して生きているこの男にはな。

不良とは頑固な生き物。それでいて自分の中の正義に忠実に生きる為にプライドを持っている存在だからな。

リュウにもそれは理解出来た。だがハヤトと少し違うのは、内藤の意見こそが正しいと考えているところだろう。
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