神への挑戦
どうやら何も言えなかったのは俺だけだったようだ。

リュウもまた不敵に笑みを浮かべ、内藤に語りかけた。

「事前情報とさほど変わらないメンツで驚いたぜ。それに内藤さん…あんた嘘を吐いただろ。睡蓮会が一枚岩ってのはまったくのデタラメだ。実際はかなり際どい状態が続いていると俺は読んでいる」

余裕の表情を崩さない内藤だが、リュウの言葉を否定する雰囲気はない。

そんな中リュウは、内藤に近づいて行くと、内藤のデスクに腰をかけ、懐に忍ばしていたタバコを一本加え火を着けだした。

すると内藤はデスクの引き出しから灰皿を取り出し、デスクの上に置いた。心底嬉しそうな表情をしながら。

「組織内での力関係が微妙に変化しているんだろ?アンタの所属している日医や国水会の力が増し、大して成果を上げれていない警察や政治家が組織内でのパワーを弱めている。睡蓮会はトップが横一列に並ぶ様な不安定な組織構成だったはずだよな?他のトップの奴らも、日医がアメリカになるのを喜ぶ訳がない…つまりは一枚岩とは言い難い。実際俺らに付け入る隙を与えているのだからそれは間違いないだろうよ」

饒舌に話しだすリュウを横目にハヤトが口をはさめない会話に進展し出した。

そんな中、対抗するかの様に内藤もまた口を開く。

「隙を与えたのは事実かもな。実のところ警察官がこの睡蓮会本部に常駐している訳でもないし。ここにいる兵隊のほとんどは国水会の配下もしくはそれに関係する下部組織でまかなわれている。今回の事件のような事が起きない限り警察の出番はなしだ」

リュウの意見を肯定するかの様にそう答えた。内藤がハヤト達の素性に気づきながらもここまで案内したのにも何か理由がありそうな感じがする口調でもある。

「だがそれでも睡蓮会は、裏組織を牛耳るだけの力は保持しているのは間違いない。それでもこうやって隙が生まれたのには何かしらの理由があるはずだ。お前らのリーダーが誰かは知らないが、睡蓮会に縁がある人物じゃないとこうはうまくは行かないだろう…お前らの組織が未成年ってところも少し引っ掛かるしな」

内藤は薄々気づいているのかも知れない。ジンの存在に。

俺もジンの素性は知らない。知っているのはジンとゲンが昔、この場所に居たという事だけ。
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