神への挑戦
そう考えると俺も少し引っ掛かる事がある。ジン達はどうやってこの場所から出れたのかと言うことだ。

ジンは13歳でジャッジタウンに姿を現した。少なく考えてもそれ以前にこの地下施設から抜けだした事になる。

武装した男たちが常駐し、白衣を着た男たちに徹底管理されているこの場所からだ。

そうなると答えは一つだ。間違いなく、この施設の誰かがジンとゲンを意図的に外に連れ出した事になる。

「俺達の組織が未成年で構成されているのはたまたまだ。その方が都合が良かっただけのこと。それよりも内藤さん…手を組まないか?」

リュウと内藤は二人で話を進めていた。といっても俺が口を挟む余地はなさそうな会話なんだがな。

内藤はデスクでふんぞり返り、リュウはデスクに腰かけ、腕を組みながら話している。ここでリュウが勝負をかける展開になった。

「当然内容によるな。俺に有益性があるのなら考えるよ」

リュウの提案に内藤はかなり乗り気になっている様に見える。というよりもこの展開を待っていた用にも感じる。

「俺からの頼みごとは二つだ。一つは睡蓮会での俺の立場をはっきりさせておきたいんだ。つまりは俺を内藤さんの部下としての立場を作ってもらいたい。そしてもう一つはある人物までアイツを案内してもらいたい」

そう言うとリュウは、俺に後ろ指をさしてきた。リュウの言うアイツとは俺の事なのだろう…。とある人物って誰のことだ?

「一つ目は余裕だ。二つ目は人物による…誰の下に案内してほしいんだ?」

「加藤議員の息子でこの睡蓮会本部に居るはずの男…タケシだ」

俺がこの場所に赴いた一番の目的であるタケシ。リュウは俺をタケシの下に案内させようとしていた。

「うーん…それは少し難しいな。相馬さんとはウマが合わないんだよなぁ。でもまぁやって出来ない事はないかな。って事でそれも可能だ」

そう言うと内藤はデスクに投げ出していた自分の足を地面に戻すと、前かがみになりながらリュウに視線を送り出した。

「さてこれからが問題だ。その願いを聞く代わりに君は、俺に何をしてくれるのかな?」
< 329 / 335 >

この作品をシェア

pagetop