神への挑戦
リュウの代わりにそう説明した内藤は続けて詳細を語り出す。

「脳内麻薬を司る海馬を強制的に抑制する為に作られた薬で、まだ試験段階を出ていないいない薬だが、望んでいた成果が出ているので睡蓮会で採用している激薬だ。自発的な行動を完全に遮断し、こちらの望む様に暗示をかける事で実験をスムーズに行えるんだよ」

この時知ったこの薬の詳細。それにリュウがこの薬を持っているという事実とこれまでの事件の経緯に俺は、少し引っ掛かりを感じた。

その引っ掛かりとは、そんな悪魔の薬を持っているのに使わない手はないのではないかという事だ。

「リュウ…まさかお前らこの薬を使って、未成年を兵隊に変えたのか?」

椎名製薬工業で見たジンの私兵。完全に統率が取れていたあの布陣は暗示による誘導だったのではないかという事だ。

というか核心めいたものがある。普通こんな事件に加担する事など一般的に考えれば絶対に避ける出来事だからだ。

「その通りだ。このPMレインを使い、俺達の思い通りに動くように暗示をかけている。強い副作用が出ない程度にだがな…」

「強い副作用?」

「あぁ。このPMレインという薬は、使い過ぎると脳に重大なダメージを与える薬だ。俺たちは一時的に暗示をかける為だけに使っているから、副作用と言っても、暗示をかけられている間の一時的な記憶障害ぐらいしか問題は起きない。でもここに居るガキ共は違う…完全に許容量を超えているはずだ。精神崩壊レベルの副作用が起きるレベルのな」

リュウの話を聞くと内藤は、容認するかのように一つ頷いた。

「そうだね。PMレインを定期的に服用している限りは大きな問題は起きないけど、薬の効き目が切れるとそうなると思うよ。今まで抑制していた感情がドバっと吹き出て、感情のコントロールが出来なくなるはずさ」

感情を抑制されている…。

だからアナザーヘブンの広場に居た子供たちは、あんなに静かだったのか。

「何か言いたそうな顔してるよ。まぁ言いたいことは分かるけどね…なんでそんな事が出来るのかとかそんなところでしょ?答えは簡単だよ。それが俺の仕事だからさ。どうせここで死ぬんだから、感情なんか必要ないしね。俺らには子供の感情は不必要なの」
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