神への挑戦
エースはそんなハヤトの様子が気になりながらも、仕事の話に戻った。

「まぁね…今日、ざっと町を見回して、一つ解った事があるんだ。それは、売人らしい人間が、この町にはどこにもいないって事がね」

「だからそれで、困ってるんだろうが。わざわざ現地にまで来て、何の情報も見いだせないこの状況が…」

ジャックは、そんな当たり前の事を、勿体つけて言うエースに、少し呆れながら言葉を返していた。

「ジャックもまだまだだね。この状況の意味が理解出来ないのかい?」

「…その心は?」

ジャックには、エースの言っている意味が未だに理解出来てはいなかった。情報を集めるために、この町に来たのに、何もなかったんだ。それで、何を組み取れば良いんだと…。

「良く考えれば解ることさ…まず、第一の理由として、警察の目が気になり、売人の行動範囲が狭くなったという事。まぁ、わざわざ外で客を集めなくても、インターネット上で、解りずらい隠語を使えば良いだけだしさ。でもそれは、昔からあった手法だから、俺の言った理由とは当てはまらない…」

インターネットの普及や、携帯の普及で、日常生活の便利さは飛躍的に伸びた。だが、それと引き換えに、麻薬の売買も昔よりはリスクが低く済ませる事が出来る様になったのだ。

「俺が言いたいのは、何でこんなに麻薬の売買で、大量の人間が捕まる様な事態になったのかって事。ジャックは何でだと思う?」

エースはここで、ジャックに意見を求めた。

「…そうだな。バカな売り方でもしたんじゃないか?」

ジャックは対して、考えもせず、適当にそう答えた。だが、エースはそのジャックの答えに、頷くと言葉を続けた。

「俺もジャックと同意見さ。バカな売り方をしたから、こんなに捕まる人間が出てきたんだ。そして、それは意図してやった行為だと俺は思う…」
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