神への挑戦
エースの言葉に、ハヤトとジャックは怪訝な表情をする。わざわざ捕まる様な行動をする意図…。

「その行動にどんな意図があるって言うんだ?」

ジャックは、理解出来ないといった顔をする。

「本来、麻薬の売買で捕まりやすいのは売り手より買い手なんだ。それは、売る方の人間は、商品を隠す事が出来るが、買う方は麻薬を使った痕跡を隠す事が出来ない。ニュースとかでも、芸能人が麻薬で逮捕される事はあっても、売った人間が捕まるニュースはあんまり見ないだろ?」

エースの説明に、真剣に耳を傾ける二人。確かに、麻薬の密売の逮捕は、しっかりとした裏付け捜査をして、令状を作成し、家宅捜索などをしないと、売人などを逮捕する事は難しい。

だが、使用者は身体に何かしらの痕跡があったり、性格の不安定な部分が見え隠れしやすいから、特定するのも、逮捕するのも売り手よりは格段に簡単なのだ。

「なのに今回の事件は、買い手が捕まった話は聞かず、売り手の人間が捕まった話しか聞かない…それも、どう考えてもおかしい。その理由として、考えられる可能性は一つだ…」

エースはここで言葉を区切ると、一呼吸置いた。そして、その理由を話した。

「今のこの町の状況や、バカみたいな売り方をしていたのに、今はしていない理由。それは、大量の顧客を集める事にあったんだ。この三か月で捕まった人間は全て捨て駒で、これから、本格的な麻薬の販売をする為の下準備でしかなかったのさ…」









影の中の影…。

一部の人間しか知らないが、影でこう呼ばれている集団が居た。

その名も『ミスト』

実体は必ず存在しているのに、捕まえようとしても、霧の様に姿を消す事からこの異名をつけられた、未成年限定で、仕事をくれる集団。

そして、この集団の仕事はただ一つ。

それが、麻薬の販売だ…。

決められた仕事と約束事を守れば、法外な収入をくれるこの集団は、国籍はもちろん、性別すらも誰も知らない…。

ただはっきりしているのは、麻薬はミストが用意してくれるし、普通の麻薬の販売よりも、かなり金が良いと言う事だ…。

そして、未成年限定なのも、ちゃんとした理由があった。
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