神への挑戦
ハヤトが側に居て欲しい…。それは、マリコにとって一番の願いであった。

ハヤトは、中学も高校もまともに行っていないので、今さらジャッジタウン以外の仕事を出来る状況ではないのだが、それでもマリコはハヤトに側に居て欲しいと思っていた。

そしてそれは、ハヤト自身も感じている事でもある。口に出して言わないだけで、ハヤトにとってもマリコは大切な存在だ。

マリコはお節介で、すぐに焼きもちをする、俗に言う重たいタイプの性格。だが、それ故に自分が凄く愛されているとストレートに感じる事が出来るのだ。ハヤトにとって、それは重たいと感じる以上に、安心感を与えるものであった。

「そうか…いつかは、ちゃんと考えないといけないな。でも、今は無理なんだ。俺には、やらなくちゃいけない仕事がある…俺が、俺である為の仕事がな」

ハヤトはそう言うと、今までの優しい雰囲気を消し、ジャッジタウンに居る時の表情に戻した。それは、プライベートと仕事を両立出来ないハヤトの癖でもある…。

ハヤトは簡単に言えば、仕事人間なのだ。

「仕事か…そう言えば、これから忙しくなるって言ってたよね。…危険な仕事じゃないよね?」

ジャッジタウン自体が危険な場所。それは、マリコもジャッジタウンに行った事があるから、それは重々承知している事だ。

だが、マリコが言っているのは恐らくそう言う意味ではない。

ハヤトがジャッジタウンを離れ、こうして地元に帰ってきている。それが、ある意味不自然であるとマリコは考えているのだ。

「危険かどうかは、俺にもわからない。でも、危険だとしても、俺は仕事をやり抜く…この仕事に俺が任命されたのにも、偶然じゃない気もするしな」

麻薬の密売にジャッジタウンが関わっているかもしれない。それが、ハヤトがこの事件に関わった理由。
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