神への挑戦
今まで、気にもしていなかったが、良く考えると、あの男にしては珍しく、真剣な表情でハヤトに言った言葉であった…。

人形の様に整った顔をしており、同年代の人間の中では、ズバ抜けたカリスマ性で、100人規模の組織を作った男。

決して力の底を人には見せず、思慮深い…生まれる時代が違えば、確実に時代を左右出来るぐらいの事をやってのけそうな男…。

「……堕天使…ジン」

自分の存在を『見出生児』と言う言葉で表現したジン。今考えれば、とても気になるフレーズだ…。

きっと、何かがある…。

ハヤトは、自分の携帯を取り出し、アドレス帳を探すと通話ボタンを押した…。










ジャックがチェックインしている、ホテルの部屋でパソコンと向き合っている時、エースは、ホテルの近くにあった、大人な雰囲気のある喫茶店で、コーヒーを飲んでいた。

ジャックが一生懸命、仕事をしている最中に、エースはのんびりと、コーヒータイムを楽しんでいたのだ。

何も知らない人間が見れば…だが。

何度も言う様に、ジャックは情報収集が仕事で、エースは推理が仕事だ。エースなりに、自分のスタイルが存在する。少量の砂糖とミルクを入れた、微糖のコーヒーを飲みながら、タバコをふかし、自分の頭の中で情報を整理する…。

目の前には、A4サイズの紙があり、フローチャートの様に、今までの情報を線と線でつなげ、情報を整理する。

解っている範囲での時間軸を書き、ミストに関係してそうな、麻薬の事件をリストアップし、地域や特徴を書き込んでいく。

だが、その作業には対して意味はなかった。

エースの頭の中には、すでに目の前で書かれている以上に、精密な図面が出来上がっているからだ。
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