神への挑戦

ハヤトは、とても嫌な夢を見て、飛び上がる様に起きた。

腕には鳥肌を立てながらも、背中には、ぐっしょりと寝汗をかいていた。そして、勢いよく、自分の髪の毛をかき上げる。

この時ハヤトは、人生で初めて夢でうなされていた。大抵の事態には、冷静に対処出来るハヤトだが、この夢に関しては、動揺せざるおえなかった。

それぐらい、嫌な夢だったのだ…。

「これは夢だよな……」

ハヤトは、そう口にすると、自分の隣で寝ている、マリコに視線を向けた。

マリコは、こんなハヤトの様子に気づく事なく、深い眠りについていた。定期的に聞こえる呼吸音が、マリコが起きていない事を告げている…。

その様子を見たハヤトは、自分が起きあがった事で、はだけた布団を、マリコを起こさない様に、優しくかけ、布団から出る事にした。

ハヤトが居るのは、ハヤトの実家で、自分の部屋だ。マリコは、何だかんだで、外で遊びにハヤトの家に泊まりに来て、こうして一緒のベットで寝ていたのだ…。

ベットの下には、ちゃんと布団が敷かれているのに。

ハヤトは、静かに自室を出ると、リビングに向かった。時間は朝方の４時頃で、外はもうすぐ、朝日が出そうな状態だった。

ハヤトは、誰もいないリビングに行くと、台所に向かい、冷蔵庫から水のペットボトルを取りだし、一気に飲み干した。

そして、一呼吸置くと、深いため息を吐いた。

「…生々しい夢を見ちまった。あれは何だったんだ…俺が……タケシを殺す訳ねぇだろうが。ふざけやがって…」

ハヤトが見た夢。

それは、ハヤトがタケシを拳銃で撃ち殺す夢だ。年も、今のハヤトと同じ１８歳ぐらいで、綺麗なスーツを着込み、タケシの手にも、拳銃が握られていた…。

そして…ハヤトが、タケシを撃ち殺したのだ。