神への挑戦

坂井さんは手帳を開き、眼で確認しながら、説明を始めた。

「数で言えば、２０倍以上です…二、三年前までは、主に首都圏で小遣い稼ぎ程度に麻薬の密売をしている人間は居たのですが、今回の様な組織的な動きではなかった様です」

「組織的な動きか…これだけ麻薬の密売の人数が飛躍的に増えれば、そう考えるのが妥当だな。エース…お前はどう見ている？」

黙って事の展開を見いるエースに、ジャックが声をかけた。エースは、少し考えた素振りをした後、口を開いた。

「今回の事件は、単なる麻薬の密売じゃないだろうな…」

エースは書類に目もくれる事なく、そう言いきった。

「このご時世だ、麻薬の値段の価値は昔より高価な物になっている。簡単に仕事につけなくなった今の時代で、未成年がそんな簡単に麻薬を仕入れる事が出来るとは思えない」

「なるほどな…じゃあ一体何の目的があって、こんな異常な事態になっているんだ？」

ジャックが再度エースに問いかけると、今度は手を開き、顔の横に構えた。

「それはまだ分からんね。これからそれを調べるのさ…まずはね」






「それにしても今回のギャラは異常に高くないか？」

坂井さんと一通り会話を終わらした後、坂井さんは仕事があると言い、ホテルを後にした。

残されたエースとジャックは遅めの昼食を兼ねて、ホテルのカフェでミーティングを開いていた。

「前金で５００万で、成功報酬が２０００万…いつもの報酬とは桁が全然違う。一体あの人達は何者なんだ？」

新鮮なレタスやトマトを贅沢に使った、ハンバーガーにかぶりついているエースに、ジャックが話しかける。エースは、口の中の食物を胃に通した後、口を開く…。

「それだけ今回の仕事が難解だってことさ…多分、俺達以外にもこの仕事の調査をしている人間はたくさん居る。前金でこれだけ金を払っているって事は、おそらく先に他の連中に解決された時は、成功報酬は貰えないって事だろうな」

エースは律義にもしっかりとごちそうさまと言うと、店員に食後のコーヒーを頼むと、タバコに火をつけた。