神への挑戦
すると、その様子を見ていたリュウという男は、その男の横顔を見ながら、何やら険しい表情をしている。

「…お前は、これで良いのか?後悔はしないか?」

「しないさ…これが、俺の役割だからな。俺は、この時の為に生きてきたんだ…そして、これが最上の策だ。これ以外に、奴等を殺す方法はない…」

男は、そう言うと、テーブルの上に置かれている、一つの錠剤を手に取った。それは、どこにでもある、サプリメントの様な、グミ状の光沢を持った錠剤。

「これが俺達の切り札なんだ…この『PMレイン』(ピムレイン)がな。これが世に出回れえば、『睡蓮会』はもう俺達を無視出来なくなる。」

「そうか…お前が、もう覚悟を決めたのなら、俺はお前の運命を見届けてやるよ」

リュウはそう言うと、静かに『PMレイン』を見つめている男の元を離れ、倉庫の外に向かって歩きだした。

そして、男の視界から完全に見えない位置に移動した後リュウは、悲痛な表情で、男が居るであろう方向に視線を向けていた。









眠らない町、不夜城、東京。

町中は、人の声が絶えることなく聞こえ、希望と絶望が入り混じった場所。

そんな場所では、日々忙しく仕事をしている人間がたくさんおり、緊張と責任に押しつぶされそうになっている人がたくさん居た。

逆もまた然りで、仕事がなく、生きるための金を欲している人もたくさんいる。

どちらも、悩みは違うが、陥っている状態は同じだった。

心身共に疲れている。そして、それは発散出来る人もいれば、出来ない人間も居る。

疲れているのに、休みがない。

疲れが残っているから、仕事がはかどらない。

ミスをすれば、自分の立場が危うくなる。立場が悪くなれば、家族が路頭に迷うかもしれない…。

心身共にスッキリさせたい。でも、時間がない…。
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