神への挑戦
「………」

思わずハヤトは眉間にシワを寄せてしまう。

何故なら、カツミはハヤトと握手をすると、かなりの力を込めて、手を握ってきたからだ。女性なら、簡単に骨が軋むほどの力で握っている。

ハヤトは、この挑戦的なカツミの挨拶に応える様に、力を込めて握り返した。今度はカツミが眉間にシワを寄せる。それは、不機嫌になった訳ではなく、確かな痛みを感じての表情だった。

「何をやっているんだお前達は。ガキみたいな事をするなカツミ…」

この状況を見たシンが、呆れた表情でカツミに注意した。

「悪気はなかったんだ。ただケンカが強いってのを確かめてみようと思っただけ…確かにコイツは上玉だな」

カツミは、握手していた手を放すと、シンの方を見てそう答えた。するとカツミは、工場の奥にある事務所の様な場所を親指で指差し、ハヤトに話しかける。

「少し説明したい事があるから、こっちに来てくれ。聞きたい事もあるしな…」

ハヤトは、解ったと言い頷くと、カツミの後に続き事務所の中に入って行った。事務所内は、古くから使っているのであろうデスクやパソコンなどが置いてある、割としっかりとした事務所であった。

奥方には、ストーブに囲まれる様に、イスが置いてある場所があり、カツミとシンはそのイスに腰かけると、ハヤトにもそのイスに座らせた。

「聞きたい事なんだが、ハッキリ言おう…何処で俺達の事を聞いたんだ?」

カツミは、タバコを取り出し、火を着けると、ハヤトにそう聞いてきた。

「何所でか…それは言えないな」

「ほぉ、それはナゼだ?」

ハヤトの答えを聞いたカツミは、少し後方に頭を傾けると、口角を上げ、再度ハヤトに質問をした。
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