神への挑戦
ハヤトはそのカツミの様子を見ても、態度を変えなかった。

「誰から聞いたかは、言わない約束をしたから教えられない。ただソイツは、お前等が麻薬の密売をしている事を知らないのは確かだから安心して良い。俺が聞いたのは、お前等が金の良い仕事をしているという事だけ…そして俺にとっては、それだけで十分だった」

「十分ねぇ…鉄砲玉みたいな仕事だったらどうする気だったんだ?話を聞いた後じゃ、辞めますも通用しない仕事だったらよ」

カツミの追及は、思ったよりもしつこく、ハヤトに質問をぶつけまくっていた。だがそれも、この仕事ならではの事なのだろう。

それぐらい、この仕事は内密にしないといけない仕事だから。

「その可能性は限りなく低いだろう。ヤクザ同士の抗争なんて、滅多にあるものじゃないし、その仕事だけで財を築くのは無理だ…リスクとメリットが釣り合ってない」

ハヤトはどういった経緯で、この組織を知ったかをシン達に説明する事は出来ない。もし影にミストに関係する人間が居たら、間違いなく警戒されるからだ。

なので嘘を突き通す必要がある。この二人を納得させられる程のな。

ハヤトは、頭をフル回転させながら、言葉を続けた。

「考えられる仕事は、非合法のかつ、収入が見込める仕事だ。そう考えたら、麻薬が妥当だと思ったのさ。そして麻薬の密売は、今のこの状況には一番適した仕事だ…そうだろ?」

「そこまで知っているのかテツヤは…確かに、今の状況は売り手にしてはチャンスと言える状況だ。暴力団関係が、売るに売れないこの状況はな」

ハヤトの言いたい事が解ったシンは、納得した顔をした。

麻薬は常習性が強く、タバコや酒みたいに、一時の我慢では辞める事は絶対に出来ない。なので、売り手が売れなくなると、買い手は物凄く困る事になる。

そして今、暴力団関係は、ミストが弊害になっており、麻薬の密売が困難な状況だ。新しい顧客を集めるにはこれほど適した時は無い。

つまりは今が、麻薬密売のモメンタム(急成長)の時期と言えるのだ。
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