神への挑戦

ハヤトが麻薬の密売組織と接触した日の夜遅く、エースは50代前半の男性と酒を飲み交わしていた。

二人とも、この店に来て、挨拶を早々に、無言で目の前の酒を楽しんでいた。だが沈黙は、気まずさなどは少しもなく、むしろこの雰囲気を楽しんでいるかの様だ…。

二人とも、一杯目のウイスキーを飲むと、エースが口火を切った。

「…あなたも色々と忙しそうですね小宮さん。俺も、小宮さんのおかげで忙しく日々を過ごさせてもらってますよ。大好きなパチンコも行けずじまいですしね…」

エースの言葉を聞いた小宮は、エースの言葉に含み笑いをすると、口を開く。

「ギャンブルの才能はなさそうだし、丁度良いじゃないか。時間は有効に使ってこそ、価値があるってものだ」

小宮は、新しい酒をバーテンに頼むと、一杯目の酒よりもゆっくりのペースで酒を口にした。

「無意味な行為にこそ、真の楽しみはあると俺は思いますけどね。まぁ、価値観の違いですよ」

エースも、新しい酒を頼み、小宮のペースに合わせるかの様に、酒を楽しんでいた。

「そうか…そろそろ要件を聞こうかエース。俺も時間を裂いてここに来ているのだからな」

「そうですね。俺も、そんなに暇じゃないし、そろそろ本題に入ろうかな…」

穏やかな時間は儚く短い…。そう思わせるぐらい、二人の纏っている空気が一変した。

「小宮さんは、この事件に『睡蓮会』が関わっている事を知っていましたか？」

「…あぁ。確証は持てなかったが、そんな気はしていた」

小宮は、エースの言葉を聞き、嘘を言わずにそう答えた。

「今回の事件、小宮さんが俺に頼むぐらいだから、タダ事ではないのは解っていましたが、睡蓮会が関わってる事件だと気づいた時は、俺も驚きましたよ。そして納得しました…睡蓮会が相手じゃ、公安もまともに人員が裂けないってね」