見えないアナタへ〜SHORT STORY〜
〇真実
「…あ、楠田!」
俺の変わらない日々に変化が起きて数日が過ぎた。
あれ以来、人と関われるようになった。
それなのに…。
一番報告したい人には、まだ会えていない。
「なんだ?」
「わかったんだ、わかったんだよ。木立華のこと!」
それを聞いたとき、鳴り響いていたはずの音楽が、突然消えたような気がした。
「…なんだよ、ぼおっとして。この前頼んだだろ?」
「あ、あぁ…悪い」
やべぇ。
思考が停止してた。
……わかったんだ、華のこと。
「木立華って、可愛い子だな! もしかして、楠田が変わった原因は木立華?!」
男子は少しニヤついて言った。
「まぁな」
「じゃあ、ヘッドフォンからイヤホンに変わったのもかぁ!!」
……うるせぇよ。
こんなふうに会話できるようになったのは、華のお陰。
「じゃあ、木立華に感謝だな!」
男子は言う。
「だって、楠田の表情が変わったから、話しかけられたんだぜ?」