見えないアナタへ〜SHORT STORY〜
〇さようなら
俺は走った。
ガラもなく、一点を目指して。
「……はぁ、はっぁ」
いない……。
華の姿は見えない。
「はぁぁっ」
俺は思いっきり息を吐きだし、草村に体を放り出した。
そして目を閉じ、イヤホンを外す。
ざあざあ…
チュンチュン……
ほんとに、この世界は音で溢れている。
……華、また話してくれよ。
この音たちの良さを。
「ネオ、くん…?」
「は…、華っ?!」
目の前に現れたのは…
華だ。
ずっと、会いたかった女の子。
………死んだはずの。
「あ、初めて名前よんでくれたね」
偽りのない笑顔。
ついこの間まで嫌いだった、人間の笑顔と声…。
なのに、今は…
………愛おしい。
「華……」
君は、本当の華…?