ミックスラブルス
「そんなことないよ、俺は大丈夫だからそんなに心配しないで」

申し訳なさそうに言う明西さんの言葉を遮るように俺は言い放った。

「でも・・・」

「大丈夫だから、こんなのもうちょっとすれば動けるようになるからさ、だから心配しないで・・・な」

困り果てた顔をしている明西さんに俺は微笑みかけながら優しく言った。それからしばらくしてもう周りが暗くなってくるまで俺たちは一言も話さずただ黙って時間が過ぎていくのを感じていた。

「もう暗くなったから帰るか?」

俺は沈黙を破ってそう言いながら立ち上がった。

「だめだよ、まだ安静にしていないと」

明西さんは俺を心配して言ってきた。

「もう大丈夫だから、それよりこんなに遅くまで一緒にいてくれてありがとな、正直助かったよ」

俺は明西さんに心配されないように笑顔でお礼を言った。

「そんなことないよ、私が先に高畑くんに助けられたんだから」

「じゃあ俺も今明西さんに助けられたからお互い一緒だね」

明西さんがまだ心配そうな顔で俺を見てきたから俺は大きく背伸びをしながら笑顔で言って見せた。

「高畑くんって優しいんだね」

明西さんはようやく安心してくれたのか微笑みながら言ってくれた。俺はそんな明西さんの様子を見て安心した。

「そんなことないよ、これが普通だって」

俺も安心できたことが嬉しかったから自然と笑顔になれた。

「そう、じゃあ私を家まで送ってね」

明西さんはそう言って笑顔で俺の腕を抱き寄せてきた。

「ちょっ、いきなりくっつくなよ、恥ずかしいからさ」

俺はいきなりくっついてきた明西さんの大胆な行動にびっくりして飛び跳ねてしまった。

「いいじゃない、私をさっきのようにこれからも守ってね、高畑くん」

明西さんはそう言ってさらに力を強くしてきた。俺は明西さんの行動に完全に動揺してしまって何を言えばいいのか分からずろれつがまわっていなかった。

「何言ってんだ、女を守るのは当たり前だろ」

今の俺にはこの一言を言うのが精一杯だった。

「私、高畑くんと同じ学校に転校できてよかった~」

明西さんは満面の笑顔で全く俺から離れようとしなかった。
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