ミックスラブルス
「まさかお前知らないのか、水村はこの前の試合ミックスダブルスで関東大会に出場して準優勝した奴だぞ」

「えぇ～」

まさか水村がそんな実績の持ち主だったことを知らなかったせいで余計にびっくりしてしまって飛び跳ねてしまった。いつの間にかそんなすごい奴に勝ってしまったのだ。

「お前本当に知らなかったのかよ、ちゃんと相手校の情報くらい確認しとけよ」

「は、はい、気をつけます」

俺はそう言って先生の傍を離れて荷物を試合前に置いていた所に置いた。置いた荷物の隣に座ってフゥッと大きなため息をついた。

「まさかあいつが関東で準優勝するレベルだったなんて」

俺は水村の肩書を知ってその相手に勝ったことに驚いてしまった。

「試合どうだった？」

「花原さん、試合は勝ったよ」

「えぇ、あの水村に勝ったの・・・すごぉい」

「え、花原さんも知ってたの？」

「知ってたよ、この前の試合で関東準優勝したんでしょ」

「花原さんも知ってたんだ」

花原さんも知っていたことを知って何も知らなかったのがなんだか恥ずかしくなって顔を見ないように俯いた。

「どうしたの高畑くん？」

花原さんは俺が俯いたのが何でか気になったのか、顔を覗き込んできた。

「俺、上島先生に言われるまで水村がそんなにすごい奴だったこと知らなかったんだ。だから知らなかったのがなんだか情けなくてさ」

俺は俯いたまま正直に答えた。

「そうだったんだ」

「情けないよな、そんなことも知らなかったなんてさ」

「そんなことないよ、相手のことを知ってても知らなくてもいつも全力で挑むのが高畑くんのいいところじゃない」

「えっ」

思いもしないことを言われて俺はがばっとすごい勢いで頭を上げた。

「ねっ」

太陽を背に満面の笑顔でそう言ってくれた花原さんはまるで天使のように見間違えてしまうくらいにきれいだった。

「そうかもな」

「そうだよ、高畑くんは」

微笑みながら答えると花原さんも笑顔で返してくれた。

「お～い高畑、花原ミックスダブルスの試合入ってくれ」
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