ミックスラブルス
「話って?」

「一緒に来て、ある場所で話したいの」

「分かった。じゃあその場所についてくよ」

「ありがとう、じゃあ行きましょう」

何をしているのかを聞くと明西さんは俺の目を何かを決心したかのような目で見ながら答えてきた。だから言われたとおりにその場所についていくことにした。だけどいったいどこへ連れて行くつもりなんだ。そんなことを考えながらお互い一言も話さずにその場所へ歩いて向かった。少しの間歩いて明西さんが止まった場所を見て俺はそこでの出来事を思い出した。

「ここは」

「そう、ここは高畑くんに私が男の人たちから助けられた場所」

今俺たちがいる場所は明西さんが輝龍高校に転校してきて3日目だったかな。たまたま通りかかった俺が大学生二人組みに絡まれてる明西さんを助けた場所である川沿いの橋の下だった。もう部活が終わった後ということもあって周りに人影は全くなかった。明るい夕日の光が俺たちを照らしていた。

「まぁ見事にコテンパにやられたけどな。あの時の俺はすごくかっこ悪かったなぁ」

「そんなことないよ。あの時の高畑くんはすごく男らしくてかっこよかったもん」

頭を軽く掻きながら半笑いして言ったことを明西さんに否定されてその後に言われた言葉を聞いてつい恥ずかしくなってしまった。まさかそんな風に思われているとは思ってなかったから。

「かっこよかったってあんなにボロボロにされてか?」

「やるやられるじゃなくて、あの場面で自分のことを考えないで私のことを逃がしてくれたことが大切なんだよ。普通の人じゃ絶対見て見ぬ振りして通り過ぎるもん」

「そういうもんなのか?」

「そういうものです。女の子は守ってもらいたいんだから、だから自分のことを守ってくれる人がほしいの」

「そうなんだ。だけど俺じゃあその守る人になるのは厳しいな。強くないし」

「だからその考えが違うんだってば。絶対に守るって言う気持ちが大切なの。そんな気持ちを持っていつも側にいてくれる人がいいの」

明西さんの言葉に俺はこれまで誤解していたことを知った。これまで女子は見た目がかっこよくて守るときも絶対負けない人がいいと思っていた。
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