ミックスラブルス
「だから私と付き合ってください。そうしてくれれば私は高畑くんが挫折しそうなときは支えるし、頑張っているときはそばで応援するから協力するから。その代わりに私の願いも叶えて」

明るい夕日の光に照らされながら胸に両手を添えて涙ぐんで再び一生懸命に告白してきた明西さんを見ても俺は花原さんを諦めることができなかった。一体どうすれば一番いいのかこの時の俺には全く分からなかった。ただひとつ分かっていたのはここで明西さんを傷つけたくないという気持ちだけだった。

「でも何度も言うようだけど俺は」

「高畑くんの側にいるだけでいいの。だからお願い、私をあなたの側にいさせて」

「でも」

「いいの。花原さんと付き合う前に高畑くんを振り向かせて見せるから」

「でも俺はこのままだと明西さんを傷つけてしまう。」

「何で分かってくれないの?私は花原さんには敵わなかったのね」

そう言って明西さんは瞳から溢れ出てくる涙を右手で拭いながら俺の横を走り去っていった。その時に見えた明西さんの涙を見た瞬間、このまま見送ったら明西さんが側からいなくなってしまうとすごい不安に襲われた。だから明西さんと距離が開いてしまうのは嫌だという気持ちになり、明西さんの後を追った。

「足あんなに速かったっけ」

なぜか走っても走っても距離が縮まらなかったせいで追いかけるのを諦めようと思った。しかし、ここで諦めたらこれからずっと後悔すると思い全力で追いかけた。そして一つ先にある橋の下でようやく追いついて明西さんを背後から抱き止めた。明西さんは泣いているのか俯きながら体は震えていた。さっきまでは明るかった夕焼けがだんだん沈んで辺りが暗くなってきている中、明西さんの涙が沈みかけている夕日を受けて光りながら俺の手に落ちた。その瞬間俺は自然と言葉が口から出た。

「こんな俺でいいのか?他に好きな人がいる俺でいいのか?」

明西さんの耳元で呟くように聞いた。すると明西さんは頭を縦に二回振った。

「確かに私のことを好きでいてほしいけど、花原さん相手じゃ敵わないみたいだからせめて側にいさせて。高畑くんが幸せになれればそれでいいから」


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