ミックスラブルス

その様子を見て私は今日せっかく高畑くんと仲直りしようと思っていたのにまた距離が離れてしまった気がしてなんだかすごく不安になってしまった。

「すごく嫌な予感がする」

「同感だわ。なんかとんでもないことが起きそうな気がしてきた」

どうやらさやも高畑くんの態度の変わりように何かを感じ取ったのか、不思議な光景を見る目で高畑くんたちを見ていた。そんな事を考えている私たちに全く気付かずに高畑くんは全く明西さんを自分から離そうとしないでむしろなぜか受け入れているように見えた。

結局朝はずっと明西さんが高畑くんと一緒にいたために話しかけるタイミングがなかった。授業中も何で高畑くんは明西さんを離さなかったのかとずっと考えていたせいで全然授業に集中できなかった。そして色々考えているうちに時間はあっという間に過ぎて昼休みの始まりを告げるチャイムが鳴った。

「よし、今度こそ」

一人で気持ちの整理をしながら高畑くんが座っている席へと近づいて恐る恐る声をかけようと口を開いた瞬間教室の後ろ側の出入り口から明西さんが大きな声を出しながら教室に入ってきた。そのせいで私はその場に立ち尽くしてしまって声が出せなくなってしまった。

「ダーリン、一緒にお昼食べに行こう。」

「いいよ、じゃあ行くか」

「行こう行こう」

明西さんの誘いをあっさりOKして高畑くんは腕を引っ張られながら教室を出て行ってしまった。私はこれまでの高畑くんからは信じられない行動を近くで見てしまい目の前で何が起きているのかわからなくなって、こみ上げてくる不安によって目の前が真っ暗になってしまった。

「お昼一緒に食べよう。」

「う、うん。一緒に食べよう」

背後からさやが話しかけてきて私はハッと真っ暗な世界から現実に引き戻された。そしてさやを心配させないように精一杯の笑顔で返事をした。だけど高畑くんと明西さんのことが気になりすぎてあまり食欲がわかなかった。そのままずっと同じことを悩みながら午後の授業を受けていつも通りに部活に向かった。

「ハァ、どうしちゃったんだろう私」

部室で部活をする服に着替えながら今日の自分を振り返って大きなため息をついた。一人悩んでいると部室の外から信じられない話が聞こえてきた。

「なぬ、とうとう龍にも春が来たのか？」