ミックスラブルス
声が聞こえたので気づかれてはいけないと急いで顔を上げると目の前にはすごく心配そうにしている笹本くんがいた。

「ううん、なんでもないよ」

「なるほどな」

笹本くんに気づかれないように普通に答えたつもりだったのだが、目が自然と高畑くんの背中を見てしまった。私が高畑くんを見たことに気づいたのか、笹本くんは横目に高畑くんを見ながら答えた。

「なるほどなって？」

「いや、何でもない。少し俺に付き合ってもらっていいか？」

笹本くんがなるほどなと言った理由が分からなかったので笹本くんの方を向きながら聞いてみたら、答えではなくなぜか真剣な表情で少しいいかと誘われた。その真剣な表情を見たらなんだか断るのが行けないように感じたので一緒に行くことにした。

「笹本くん、どこに行くの？」

「着くまでの秘密」

学校から１０分位歩いているが全く目的地に着く気配がなかったので聞いてみたが秘密としか答えてくれなかった。そのままもう１０分位歩いているとそんなに結構大きい公園の前まで来た。すると笹本くんはその公園の中に入っていった。この公園は一種のデートスポットで知られていて、公園の中央にはきれいな噴水があることで有名である。

「なんで癒しの公園なの？」

「それも秘密」

何でこの公園なのか気になって聞いてみたけど再び秘密とだけ答えられてしまった。何も分からないまま笹本くんの後を着いて行っているとひとつだけ５人で手を繋いで囲みきれるかというくらい大きな大木があるところに出た。この公園にこんなところがあったんだとつい感心してしまった。

「ここだよ」

笹本くんはその大きな大木を優しく撫でながらそう言った。

「こんなところにこんな大きな木があったなんて知らなかった。でも何でここなの？」

「ここなら誰も来ないからだよ。あとここの風はすごく気持ちいからね。ここにはよく来るんだ。ここにいるとすごく落ち着けるんだ」

何でここに来たのかを聞くと笹本くんは振り返ることもせず大きな木を撫でながら優しい言い方で答えた。

「そうなんだ。私もなんだかここにいると気持ちが落ち着いた感じがする」

そう言いながら笹本くんがいる大きな木の下に歩み寄った。静かに隣で止まって笹本くんと同じように優しく木を撫でてみた。
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