ミックスラブルス

ガタタ

隣の教室から机が動いた音がしてきた。まだ誰かいるのかと思ってその音がした教室を覗いた瞬間、すごい絶望感に襲われた。なぜならその教室にいたのは間違いなく高畑くんと明西さんだったからだ。何かあったのか明西さんは泣きそうになりながら顔を見せないように高畑くんの胸におでこを押し付けていた。そんな明西さんを高畑くんは優しく抱きしめながら、まるで小さな子を落ち着かせているかのように優しく表情をしながら明西さんの頭を撫でていた。私はこれまで高畑くんにこんなに優しい表情をされたことは無かった。そんなことを思っていたらなぜか自然と涙が溢れてきてしまい、そんな二人を見ているのが辛くなって私はその場から走り去った。

「なんで」

そう呟きながら階段を下りているとしたから男の人に呼び止められた。その声の主は笹本くんだった。

「花原さん泣いてるけどどうしたの？」

そう言いながら笹本くんは私の目の前に歩み寄ってきた。私は見つかってはいけないと思って、両手で涙を拭ってから笑顔で顔を上げた。

「何でもないよ」

「泣いてて何でもないわけないじゃないか」

「目にゴミが入っただけだよ」

そう私が答えると笹本くんは少しの間私を見たまま黙ってしまった。そんな笹本くんの目を見ているとなぜかまた涙が出てきそうになったので目を逸らした。

「花原さんこの後なんか予定とかある？」

「ないよ」

「じゃあ話したいことがあるから一緒に屋上に行かない。あそこなら心地いい風が吹いてて落ち着いて話ができると思うから」

「うん。いいよ」

「ありがとう。じゃあ行こう」

「うん」

笹本くんに気付かれてしまったのか、屋上なんてこんな時間には誰もいない所に行こうと言われてしまった。しかし断るのは悪いと思ったので付いて行くことにした。

「到着。やっぱりここの風は気持ちいい。ね、花原さん」

「うん、そうだね。風がすごく気持ちいい」

屋上に出た瞬間、正直に強すぎず弱すぎずちょうど気持ちいい風が吹いていた。なぜかその風は私を優しく包み込むように吹いてとても気持ちが楽になった。しかしそんな私とは正反対に笹本くんは空を見上げながら寂しそうな顔をしていた。

「ねぇ花原さん。単刀直入に聞くけど、何でさっき泣いてたの？」