ミックスラブルス
「ごめんね。笹本くんが私に対してそういう気持ちを持ってくれてるのはすごく嬉しいよ。だけど、私の高畑くんを好きな気持ちは変わらないの」

「花原さん」

風にかき消されそうなか弱い声で私の名前を言いながら笹本くんは私のことをただ悔しそうに見ているだけだった。しかしすぐに気を切り替えたのか、何かを決心したように笹本くんは再び口を開いた。

「花原さんが高畑くんへの思いを手放せないのは分かった。だけどそれは俺も同じなんだ。たとえ花原さんが俺のことを本当に好きになってくれなくても俺の傍にいてほしい。だから花原さんの気持ちが高畑くんに届くまででいいから俺の傍にいてくれないかな？俺は花原さんが傍にいてくれたという思い出だけでもいいから」

言葉にすべてを込めて気持ちを伝えてくる笹本くんの姿を見て、私は高畑くんが好きなのと同時に笹本くんの優しさも欲しいと欲張りな気持ちになってしまった。しかしそれは許されるのかと思うと許されるものではないと思った。だけど高畑くんと仲が悪くなってしまっている今、私はすごく笹本くんの優しさが余計に必要だと考えてしまっていた。

「私は笹本くんじゃなくて高畑くんが好きなんだよ」

「知ってる。さっき聞いたよ」

「私は笹本くんのことを好きになれないかもしれないんだよ」

「分かってる。でもいつか好きだと思わせてみせる」

「私を高畑くんに取られちゃうかもしれないんだよ」

「それが花原さんにとって幸せなことだったら本望だよ」

「笹本くんのことを好きだと思えない私でも優しくしてくれるの？」

「好きな人に優しくするのは当たり前だろ。たとえ俺のことを好きだと思われてなくても」

私の本心をそのまま笹本くんに伝えたら、すべての問いかけに笹本くんは何かを決心したような瞳をしながら私を見つめていた。その笹本くんのまっすぐな瞳に私は笹本くんに甘えていいんだと安心感を感じた。

「笹本くんは優しすぎだよ。何でそこまで私に優しくできるの？」

笹本くんの気持ちにようやく少し心が揺らいだのか、自然と涙が流れ始めた。

「それはそんだけ花原さんのことが好きだと思ってて、花原さんには幸せになって欲しいからだよ」
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