ミックスラブルス

「どうしたの？彼氏はすごく花原さんのことを愛してくれてるみたいじゃない」

「うん。笹本くんは本当にいい人だよ。でも・・・」

「でも、どうしたの？」

笹本くんのことをいい人って言ったのに、その後にでもと言って花原さんは何かを言い出せないのか再び足元を見ながら黙ってしまった。そんな花原さんを見て私はその言葉の続きが気になって、下から顔を覗き込むかのように前屈みになりながらその続きを聞いてみた。その続きに嫌な予感がしていたとしても絶対聞いとくべきだと思ったから。

「やっぱり私は笹本くんのことを好きにはなれない」

「えっ、何で好きにはなれないの？」

「私は高畑くんのことが好きだから」

「え、何？」

「私は高畑　龍くんのことが好きなの」

最初は俯いたまま小声でぼそぼそと何を言っているのか聞き取れないボリュームで話してくれた。だけど聞き取れないと花原さんが何で笹本くんを好きになれないのかが分からないから、私はもう一度聞いた。そしたら花原さんは今度ははっきり聞き取れる大きな声で言い放ってきた。その時言った言葉を聞いた瞬間、嫌な予感が当たってしまったと悲しくなり一時的にその場にただ立ち尽くすことしかできなかった。

「やっぱり高畑くんのこと好きだったんだ。だけど高畑くんは私の彼氏だよ」

「それは分かってる。だけど高畑くんじゃなきゃだめなの」

私が自分の彼氏だと主張したら、花原さんは私の眼をまっすぐ見てきた。そして決心したのか自信を持って自分の気持ちを私にぶつけてきた。その私に本心をぶつけてくれた花原さんを見ていたら、本当に高畑くんを取られるんじゃないかという不安がすごい勢いで襲いかかってきました。だけど私も高畑くんのことが本当に好き、心の底から愛してる。だからこんな不安に負けない。

「たとえ花原さんが高畑くんじゃなきゃだめだったとしても、私も高畑くんじゃなきゃだめだから絶対に渡さない」

「明西さんが高畑くんのことが好きなのは知ってる。だけど私は高畑くんのことを諦められないの」