Black in White

3.傷跡

確かめる事は出来ないのだ。
傷の原因となるものはもとを辿れば他でもない自分なのに、その傷跡は自分にはないから。









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雨に打ちひしがれていた。
恐ろしく冷たかった。


雨の温度を感じる思考など持ち合わせていなかったのに、突然。


「あ、……にき」


ちゃんと声はでている?喉の内側まで凍りついてまるで刃のよう、息をする度突き刺さる。


先程の店で友人たちと注文し、セコい料金で居座る為のドリンクバーの氷も、こんなに冷たくはなかった。

自分を突き飛ばし勢い良く視界に飛び込んで来たのは同じ血の流れる兄。


「………ッ」


地面に擦りつけた膝の痛みは広がる光景にかき消される。

冷たい、冷たい、
唯一温かいと感じた、赤いそれ。いや、暗くて見えないが恐らく、確かに、赤いのだろう。


湧き上がる嘔吐感に、元を取る為に流し込んだ液体が、全て無駄になりそうだった。



トマトジュースなんてこんなとこには珍しいと笑いながら注いだ真っ赤な飲み物。

例えばこれが夢で、実際には兄に広がる色がそれならば、何を引き換えにしても覚めろと願うだろう。


雨が流そうと何の解決にもならない。それは、トマトジュースなんかではないのだ。


足から凍りついてゆく。



目眩のする身体に鞭打って脳からの命令を出す。

動け、動け、動け!!俺の足だろう!!






息を止め力を入れた刹那、ガクン!!と足が動き目が覚めた。



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