Black in White
コトン、と目の前に置かれたグラスの中には赤く輝く今日のスペシャル。見るだけで甘酸っぱい味が想像できる。
「お疲れ様。店長が飲んで良いって…氷も3つまでOKって…3つって充分だよね」
笑いながら言い、小春はグラスをよけてテーブルを拭きながら龍一の向かいの椅子を引いた。
「Close」と書かれた札をドアにぶら下げた知佳が、2人を覗き込んでからエプロンの紐を解く。
「あら、課題?意外と真面目ね、神崎くん。…あと少しなら居ても良い、ってさ」
龍一がテーブルに出していた数枚のプリントの束を捲る。
「居残りの代わりに出された、俺だけ」
「そんなこったろうと思ったわ」
「笑うな」
「はいはい。ん~と、英語?3枚目だけ、空欄だらけじゃない……あ。」
「なんだよ」
知佳は解説を始めようとしていた口を一瞬結んで意味深な笑みを浮かべた。
「小春ちゃんに教えてもらえばいいじゃない。ね、未来の先生だもん」
「えっ、あっ、はい」
知佳は徐にカチカチ、とシャーペンの芯を出すと小春に手渡して奥へ引っ込んでしまう。
「先生?」
「あ、えっとね、あたし将来先生になりたいの。小学校の先生」
「そりゃどっちが子供か分かんねぇな」
「もうっ……ね、貸してみて、プリント」
“There is something odd about her…”